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IVRを導入してみて ― 電話対応の効率化と顧客満足の両立

電話は依然として企業と顧客をつなぐ重要な窓口です。メールやチャットが普及した現在でも、「すぐに聞きたい」「直接話したい」というニーズは確実に存在します。しかし、その分だけ企業側には「取りこぼさず、正確に、効率的に」対応する責務が課せられます。

私たち彩匠堂も例外ではなく、日々多くの電話をいただきます。印刷物の仕様確認、納期の相談、請求や発送に関する問い合わせなど、内容は多岐にわたります。こうした電話対応をどう効率化し、同時に顧客満足度を維持するか――その答えとして私たちが導入したのが「IVR(自動音声応答システム)」です。

1.導入の背景

長年利用していたのは「有人の電話転送サービス」でした。外部のオペレーターが一次受付を行い、必要に応じて当社に転送してくれる仕組みです。しかし、この方法には明確な課題がありました。

・会社名やお客様の名前、用件の聞き間違いが発生し、折り返しの際に再度確認する手間が多かった
・オペレーター対応が杓子定規で柔軟性に欠け、外部からの印象が良くなかった
・月200件程度の着信に対し、費用は毎月2~3万円。決して小さくない負担

特にコスト面では、1件あたり100円以上かかっている計算になり、効率化の余地を感じざるを得ませんでした。そんなときに検討したのが「IVR」でした。見積もりを取ると月1万円未満に収まる可能性があり、コスト削減効果も十分見込めました。

2.IVRとは何か

IVRとは「Interactive Voice Response」の略で、自動音声応答の仕組みです。お客様が電話をかけると「ご用件を番号でお選びください」というガイダンスが流れ、プッシュ操作で担当部門を選択できます。

これにより誤転送や待機時間を削減でき、さらに24時間受付の一次窓口としても機能します。有人対応に比べれば柔軟性は劣りますが、精度と効率を考えれば大きなメリットがあります。

3.導入してみての効果

実際に導入してみると、効果はすぐに現れました。

・電話を受ける前に内容が絞り込まれるため、担当部署での対応がスムーズになった
・有人転送サービスは基本的に折り返しになるが、IVRでは必要な電話をその場で取れるようになり「つながりにくい」という不満が減った
・不要な転送や誤選択による手間は多少増えたものの、聞き間違いによるトラブルや二度手間が大幅に減少した

特に「即時性」の改善は大きく、顧客にとっても安心感につながりました。

4.運用上の工夫

IVRは導入しただけでは十分に機能しません。実際の運用にあたり、次のような工夫を取り入れています。

・初めての方でも迷わないよう、短くシンプルなガイダンスを設定
・繁忙期や案件に応じて柔軟に文言を変更(例:年賀状印刷専用窓口の設置)
・「オペレーターへ直接つなぐ」選択肢を残し、利便性を担保

さらに特徴的なのが「録音とAI文字起こし」の仕組みです。ガイダンスで適切な番号を選べなかった場合や内容が複雑な場合は、お客様に録音を残していただきます。その録音はAIが自動で文字起こしを行い、担当者にメールで送信。担当者は録音を一つ一つ再生する必要がなく、テキストで内容を即座に確認できます。これは想像以上に効率的で、確認作業の負担を大幅に軽減しました。

5.今後の展望

IVRの仕組みはまだ進化の途上です。私たちが描いている今後の展望は以下の通りです。

・音声認識AIと組み合わせ、番号入力ではなく会話で担当部署へ誘導する仕組み
・緊急性や顧客重要度に応じて、特定の電話だけ担当者の携帯へ直接転送する仕組み
・CRMや受注システムと連携し、顧客番号入力から過去の取引履歴を即時に参照する高度な対応

こうした展開が進めば、単なる効率化ツールを超えて「顧客体験の質」を向上させるプラットフォームへと進化する可能性があります。

6.まとめ

IVRを導入してみて実感したのは、これは単なるコスト削減策ではないということです。確かに費用は半減しましたが、それ以上に「顧客のストレスを減らす」「社内の負担を減らす」という二つの効果が大きいものでした。

人が介在しない仕組みに不安を持つ方もいるかもしれません。しかし、工夫次第で「効率」と「顧客満足」を両立できるのがIVRの強みです。今後も改善を重ね、より良い顧客接点を築いていきたいと考えています。

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