特殊紙解説シリーズ:A-1〜A-2 多色・スムースとソフトパターンの世界

はじめに
特殊紙の魅力は、色や質感で「紙そのものがデザインの一部」になることにあります。本記事では、竹尾サンプル帳の中でも最初に登場する A-1(多色・スムース) と A-2(多色・ソフトパターン) を取り上げ、それぞれの代表銘柄や活用シーンを解説します。名刺・冊子・パッケージなど、実際の現場でどう使えるかをイメージしていただけるはずです。
A-1:多色・スムース
A-1には、NTラシャ、スーパーコントラスト、箔守-FSといった「発色と加工適性に優れたスムース系の紙」が収録されています。
NTラシャ
特殊紙の代名詞とも言えるロングセラー。落ち着いたマット感と豊富なカラーバリエーションで、名刺やショップカード、冊子の表紙に定番として使用されてきました。シンプルなレイアウトでも、紙色と質感だけで印象が決まる存在感を持っています。
スーパーコントラスト
その名の通り、濃淡や階調表現をくっきり見せるのに適した紙です。グラフィックや写真印刷でも発色が鮮やかに仕上がり、展示用ポスターやアート作品などに最適です。
箔守-FS
2020年に登場した比較的新しい銘柄。箔押し加工との相性を重視して設計されており、細かい文字や複雑な図柄も美しく箔加工できます。高級ブランドのパッケージや招待状、証書など「特別感を演出する場面」で活躍します。
A-1のまとめ
A-1の特徴は「発色と加工適性のバランス」です。多彩な色展開とスムースな質感で、オールマイティに使えるカテゴリ。特に名刺や冊子表紙など「第一印象を決める紙」として信頼されています。
A-2:多色・ソフトパターン
A-2は「タント」シリーズを中心とした、表面に微細なパターンを持つ用紙群です。色数の豊富さに加え、質感そのものがデザイン要素になる点が魅力です。
タント
細かいエンボス加工が施された特殊紙。色数は数百にも及び、厚みも幅広く揃っています。招待状やDM、パッケージなど、シンプルな印刷でも紙そのものが存在感を発揮。印刷物を華やかに見せたいときに欠かせない銘柄です。
タント キラ
2021年に追加されたシリーズで、控えめなパール感が特徴。派手すぎない上品な輝きで、ウェディング関連の印刷物やブランドDMに最適です。印刷を最小限にしても、紙そのものが「特別感」を演出します。
タント ボード-F
ボード系の厚みを持つタント。パッケージやカード類など強度が必要な用途に適しており、表面のパターンと厚みが合わさることで高級感が一層引き立ちます。
A-2のまとめ
A-2の魅力は「色と質感の多彩さ」です。薄口から厚紙まで幅広く、用途に応じて自由に選べるのが特徴。タントのエンボスやキラの輝きが、紙を「情報の器」ではなく「デザインそのもの」へと変えてくれます。
活用事例と提案
彩匠堂の現場でも、A-1とA-2は頻繁に登場します。
- 名刺:NTラシャの深い色合いに白インク印刷を組み合わせ、他にない仕上がりを実現。
- DM:タント キラに箔押しを施すことで、開封前から特別感を演出。
- パッケージ:タント ボード-Fを使い、ブランドの世界観を紙そのもので表現。
これらは紙選びが単なる素材選定ではなく「ブランド体験の設計」であることを物語っています。
まとめ
A-1(多色・スムース)とA-2(多色・ソフトパターン)は、特殊紙の中でも特に利用頻度が高く、印刷現場にとって欠かせない存在です。前者は発色と加工適性のバランス、後者は色と質感の多彩さで、それぞれ異なるアプローチから印刷物を引き立てます。
次回は A-3(多色・ラフ)とA-4(色物・スムース) を取り上げ、さらに特殊紙の奥深い世界を紹介していきます。